治験の重複登録は、ばれる?ばれない?A
重複登録をすることの恐ろしさ
治験は、安全面には最大限に配慮して実施されます。
しかし、治験に重複登録をすると恐ろしいことが起こる可能性があります。
薬には飲み合わせというものがあるのはご存知でしょうか?
よく食べ物でも、「天ぷらと氷を一緒に食べたらお腹が痛くなる!」とか言われているかと思いますが、薬の場合はそんな生半可なものではありません。
医師は、治験に参加している方の薬の飲み合わせについても必ず確認をします。
そのため、どんな治験に参加したとしても必ず「今服用しているお薬はありますか?」と聞かれるはずです。
治験に参加する方のあらゆることを考慮し、治験を安全に遂行するのが医師の役目とも言えます。
そんな薬の飲み合わせで起きた事件の実例をご紹介します。
薬の飲み合わせで大変なことに…
薬の飲み合わせに関連した有名な事件に、ソリブジン事件(1993年)があります。
これはニュースにもなっています。
ソリブジンは、帯状疱疹を効能とした抗ウイルス化学療法剤です。
この薬剤は、フルオロウラシル系薬剤(5-FU、テガフール等)との併用により、それらの血中濃度が上昇し重篤な血液障害等の副作用が発現する可能性があり、実際に多数の死者も出てしまいました。
この事件は、治験での事件では無く、販売後の事件ですが、薬の飲み合わせによって重大な影響があることがこの事件からも分かります。
治験の重複参加をしたり、規定された期間よりも早く短期間に治験に参加した場合は、前の治験薬が体内に残っている可能性もあり、場合によっては、薬の飲み合わせによって副作用が出てしまうこともあるのです。
このソリブジン事件については、日本臨床薬理学会のHPでも分かりやすく解説されていますので、詳しく知りたい方はそちらもご参照ください。
薬の飲み合わせ以外の恐怖
薬の飲み合わせもそうですが、治験に短期間で無理矢理参加することには他にもリスクがあります。
それは、大量の血を抜かれてしまうことによる健康被害です。
健常人を対象とした第T相の治験では、治験薬の安全性を調査するために、頻繁に血液検査があります。
もちろん、治験参加者の安全には最も配慮されているため、1つの治験に参加するだけであれば、全く問題ありません。
しかし、重複して治験に参加する場合はもちろん、短期間で複数の治験に参加してしまうと、血を抜かれ過ぎてしまうといったことにもなりかねません。
治験の間の期間ですが、献血と同じように4ヶ月以上空けることが多いため、1つの目安として考えて頂ければ良いかと思います。
あなた以外にも影響があります
治験はよく「高額バイト」と紹介されていることがありますが、あれは表現的には間違っていて、アルバイトではなく「ボランティア」です。
ゴミ集め等のボランティアと比べ、ボランティアの方に負担が多くかかってしまうため、その負担を軽減する目的で、ボランティアの方には負担軽減費としてお金が支払われます。
そのため、無償ボランティアではなく、有償ボランティアということになります。
そして、何のボランティアかというと、「薬の開発のためにデータを提供する」ボランティアです。
みなさんが普段病院で貰うお薬も、痛み止めで有名なロキソニンも花粉症のお薬も全て治験を経て販売されています。
今まで薬で治せなかった病気が薬で治せるようになったものもあります。
病気に苦しんでいて新薬を待ち望んでいる方もたくさんいるでしょう。
そんな患者さんたちのために、提供してもらうとても貴重で重要なデータを治験で集めることになります。
治験への重複登録や規定よりも短い短期間での登録は、正確な有効性や安全性のデータが取れなくなってしまうこともあるので、新薬を待ち望んでいる患者さんのためにも治験の重複登録などは避けてもらいたいです。