エーザイの治験で健康成人が死亡

エーザイの治験で健康成人が死亡したというニュースについて

エーザイの治験で健康成人が死亡したというニュースについて

薬の副作用

 

エーザイの治験で健康成人が死亡

2019年7月30日にエーザイの抗てんかん薬(E2082)の治験で健康成人男性が死亡したというニュースがありました。

 

エーザイのHPにもニュースリリースとして掲載されています。

 

今回は第T相の治験(健康成人が対象の治験)での出来事だったということで、極めて稀な報告になります。

 

このニュースを考えるうえで、”治験”について少々知っていないと分かりにくい(または誤解して解釈してしまう)可能性がありますので、製薬メーカーの臨床開発職としての立場からなるべく分かりやすく解説していきたいと思います。

 

いくつかのニュースを見てみましたが、恐らく治験についてあまり知らない方が記事を書いているのかなぁと思う部分もありましたので、気が付いて事も含めご紹介していきます。

 

そもそも第T相の治験とは?

第T相の治験とは、治験薬を初めてヒトに投与する試験で、原則として少数の健康男性志願者において、治験薬について安全な用量を設定することを目的として、薬がどのように体内に吸収され、代謝され、排泄されていくのかを調べる治験になります。業界では、”薬物動態を調べる治験”と呼ばれています。

 

初めてヒトに投与をする訳ですが、もちろん動物実験(非臨床試験と呼ばれています)で十分に安全性を検証したうえでヒトに投与されます。

 

新薬開発の流れ

 

治験は、勝手に始めて良いものではなく、まず初めにPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)という国の機関に治験届という資料を提出し、更に、各治験実施施設または治験実施施設が契約している治験審査委員会という委員会で十分に審議されて承認されてから治験を実施することが出来ます。

 

実は、この第T相の治験において、イギリスではTG1412事件で手指の切断されてしまうことになってしまっていたり、フランスのレンヌ事件では、被験者が脳死状態になってしまったりということがありました。

 

ただ、今回の治験での死亡はどうなのでしょうか。もう少し掘り下げて考えてみましょう。

 

 

治験で使う「副作用」の意味

今回のニュースで、「エーザイの治験に参加した健常人男性が治験薬投与後に死亡した」と書かれていますが、ほとんどの方はこの文言を見たら「治験薬の副作用でヒトが死んだ!?」と思いますよね。

 

その考え方は間違えではないのですが、少々気を付けなければいけないこともあります。

 

治験の業界では、「副作用」と似たような意味の言葉で「有害事象」ということがあります。

 

「有害事象」は、治験薬との関係があるのか無いのかに関わらず、治験薬を飲んでいた期間に生じた全ての臨床上の好ましくない事象のことを指します。
つまり、腹痛、めまい、便秘、頭痛など起きたら嬉しくないような症状のことすべてを指します。

 

一方、「副作用」とは、有害事象の中でも治験薬との因果関係が否定できない症状のことを指します。

 

副作用について

 

言葉だけでは分かりにくいので、具体例を書いてみます。

 

治験薬服用中に花粉症により鼻炎になった。

「鼻炎」というのは、明らかに好ましくない症状なので、これは有害事象に該当します。
また、治験薬ではなく、花粉症という明らかな理由があるため、治験薬との因果関係は否定され、副作用には該当しません。

 

治験薬服用中に家の階段で足を踏み外して骨折した

「骨折」というのは、明らかに好ましくない症状なので、これは有害事象に該当します。
また、一見、家の階段で足を踏み外して骨折しただけなので、治験薬とは全然関係が無い気がします、これがもし、治験薬を飲んだことにより骨密度が低下していて、本来であれば骨折しないはずが、骨密度が治験薬のせいで低下していて骨折したと医師が判断すれば、それは副作用ということになります。

 

「副作用」ということばは、一般的にも結構使われる言葉ですが、間違って使われているいる場合も多いので注意が必要です。

 

なので、今回のエーザイの治験での死亡は、治験薬が原因で起きた副作用なのか、あるいは、治験薬との因果関係は無い事象(死亡というのは、好ましくないことなので有害事象ということになりますね)なのかが論点になってきます。

 

これから調べられそうなこと

調査1

 

今回のニュースを一通り見ましたが、やや違和感があったのが、今回の死亡した被験者に投与されたのが、実薬なのか偽薬(プラセボ)なのかが出ていないことです。

 

一般的に、健康成人を対象とする治験では、実薬(薬の有効成分が入ったもの)と偽薬(実薬に似せて作ってあるが、薬の有効成分が入っていないもの)を使って検証します。

 

例えば、薬の成分が入っている実薬を10人が服用して1人が腹痛を起こしたとします。このとき、薬の有効成分が入っていない偽薬を服用した10人のうち1人が腹痛を起こしたとすると、薬の有効成分が入っている実薬では腹痛の方が1人いましたが、偽薬と同じ頻度のため、安全性には問題が無いと判断できる訳です。

 

治験では、一般的には、どの被験者が実薬に割り当てられるのかは、医師でも分かりません。ですが、このように大きな事例が起きた場合には、その原因を究明するためにキーオープンという作業がされ、医師にその被験者が実薬群だったのか、あるいは偽薬群だったのかが知らされます。

 

そこで、偽薬群であった場合、これは有効成分が入っていないので、明らかに治験薬の有効成分が原因で死亡したという判断にはなりませんが、この部分の報道が無いのは何故なのかなという疑問です。

 

2019年6月に死亡しているということなので、1ヵ月ほど時間が経っているので、既にキーオープンがされているとは思うのでが…

 

これだけ調査に乗り出しているということは、実薬群だったのでしょうか、気になるところです。

 

これから続報が色々と出てくるかと思いますので、随時こちらの記事も更新していきたいと思います。

 

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