ブラックぺアンでも出てくる治験コーディネーターって何?

治験コーディネーターとは

 

治験コーディネーターとは?

フジテレビ系ドラマ「ブラックぺアン」でも取り上げられている、治験コーディネーターやニュースにもなっている日本臨床薬理学会の番組への抗議について、実際に治験コーディネーターと一緒に仕事をしている私からの視点でお話をしていきたいと思います。

 

みなさんが治験に参加するときに必ず関わる病院側のスタッフに治験コーディネーター(CRC)という役割の方がいます。

 

ブラックぺアンでは、加藤綾子さんが演じているのが治験コーディネーターです。

 

この治験コーディネーターという方は、簡単に言うと、病院やクリニックで実施される治験が円滑に進むように責任医師の指示のもと、医療機関側の補助(治験参加者の補助)をするお仕事になります。

 

そして、治験コーディネーターは、病院に所属しているスタッフ(薬剤師さんや看護師さん)が務めている場合と、SMOという会社から派遣されている場合がありますが、院内ではどちらの場合も白衣を着ていることがほとんどで、一般の方からはなかなか区別が付きにくいかもしれません。

 

文字だけで読んでいてもなかなかイメージがつきにくいかと思いますので、治験が実施されるときに登場する主な役割の関係について簡単に絵にまとめてみました。
治験での登場人物の簡易相関図

 

治験は製薬会社(または医療機器メーカー)からの依頼を受けて医療機関(病院やクリニック)で実施されるものです。

 

そして、治験は薬機法やGCPといった法律関連で遵守しなければいけないことに加え、治験実施計画書(業界ではプロトコールと呼ばれています)で規定されていることもしっかりと遵守して実施されなければいけません。

 

治験コーディネーターも医師と同じく、治験での色々な決まり事を把握しておく必要があり、治験に関わる医師(治験責任医師や治験分担医師と呼ばれています)へ注意喚起し、適切に治験が実施できるように支援するのも治験コーディネーターの大切な役割の1つです。

 

治験コーディネーターには、その他色々な内容のお仕事がありますが、具体的なお仕事の1例は以下のようなものがあります。
治験コーディネーターの具体的な仕事内容

TBSに対する見解書について

上記のようなお仕事をする治験コーディネーター(CRC)ですが、ドラマ「ブラックぺアン」で登場する治験コーディネーターは、現実と乖離しているということで日本臨床薬理学会からTBSに対して2018年5月7日に見解書が提出されました。

 

それぞれのポイントについて私からの視点を交えて考えてみたいと思います。

 

治験の契約について

臨床薬理学会_見解書@
本記事でも記載しましたが、日本での治験は、医療機関(病院やクリニック)と製薬会社(または医療機器会社)と契約をして実施されます。

 

製薬会社と治験コーディネーターが契約することは有りえません。

 

もちろん、現場で働いていてもそんな契約は見たことがありませんし、そもそも製薬会社と治験コーディネーターが契約する内容も理解できません。

 

ちなみにですが、医療機関と製薬会社の契約では、契約症例数や契約期間や治験の規定に沿ってしっかりと治験を実施すること等といったことが記載されています。

 

治験コーディネーターはあくまで医療機関側の人材(SMOから派遣されていたとしても)として考えるため、製薬会社と何かしらの契約を結ぶこと自体がおかしいかと思います。

 

負担軽減費300万円について

臨床薬理学会_見解書A
負担軽減費については、臨床薬理学会の見解書にも記載されている通り、決まりはありません。

 

そして、こちらの結論からお話すると負担軽減費300万円は有りえないと思って差支え無いと思います。

 

この負担軽減費は、医療機関(病院やクリニック)で規定されていることが多く私の実務上の感覚だと、大規模な病院(大学病院やがんセンターなど)は1来院あたり7,000円、クリニックなどで実施される治験では、1来院あたり10,000円程の場合が多く感じます。

 

ただ、この負担軽減費も治験に詳しくないと非常に誤解を招きやすいのも事実かと思います。

 

よく、「4泊×2回で負担軽減費15万円!」みたいな募集があり、「治験は短期間に高額のお金が貰える闇バイト」と認識されてしまうことがあり、その負担軽減費が設定されている背景もよく理解されておらず、プロとして働いている私も悲しく感じてしまうことがあります。

 

臨床薬理学会の見解書では、「一回の来院あたり7000円〜8000円」という記載のされ方がされています。

 

それに当てはめて考えると、「4泊×2回」ということは、通院(入退院で1回と考えると)が2回あることなり、「この治験の負担軽減費は14,000円〜16,000円が妥当で、15万円は高過ぎなのではないか…」と思われる方もいるのではないでしょうか。

 

結論からお話するとこの4泊×2回の治験で15万円の負担軽減費は異常に高い負担軽減費ではなく現実的なものかと思います。

 

というのも、この4泊2日の治験は、治験の中でも「第T相試験」と呼ばれるフェーズの治験だからです。

 

第T相試験は簡単にお話すると、原則、健康な方を対象に実施され、薬の代謝や排出や安全性などのデータを集めるために実施されます。

 

第T相試験の場合、入院を伴う治験が多く、入院中に治験参加者には、以下のような負担が生じることがあります。

・入院する必要が無い健康な人が入院していることによって生じるストレス
・入院中には喫煙や運動が制限されていることがあるため、それによるストレス
・入院中に注射などを数回する必要があることによるストレス

 

「通院しなければいけない(交通費がかかるなど)」という負担に加え、第T相試験では、上記のような負担も考えられることから、単純に1来院あたり7000〜8000円の負担軽減費になっていないのではないかと考えられます。

 

まとめ

治験は、世間ではまだ“危ない”、“闇バイト”、“人体実験”のようなネガティブなイメージが付いてしまっているのも事実かと思います。

 

治験は、みなさんが思っている以上に厳しい規制で厳格に管理されています。

 

そして、難病で苦しんでいる患者さんのために治験に協力して下さった方も数々いたことから、今ではたくさんの優れた医薬品や医療機器が開発され、救われている方もいっぱいいるのが事実です。

 

「治験ってなんだか怖い…」と思いつつも、医師やコーディネーターや製薬会社を信じて治験に参加して協力して下さった方のことを考えると、治験に対して誤解を生み兼ねない今回のような表現は控えていただきたいのが個人的な感想です。


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